2011.9.13(2011.10.13 seonatsumi)

朝、車で目覚める。

小森が先に起きていて、私がほぼフラットな座席で寝ているまま車が動きだしたのが、なんだかおもしろかった。
地面に対して水平な状態で動くことってあんまり無い気がする。
そんなこともないか。

八戸のボランティアセンターへ。
昨日対応してくれた方と、もうひとりの方からお話を伺う。
青森で初めての災害ボランティアセンターだったという。
ここ1、2年で研修してたけど、まさか本当に大きな災害が起こるとは思わなかったとのこと。
そして、ここで活動していたのは主に地元の中高生だと言う。

仙台以南、宮古以北でこういうことをよく気がする(私見ですが)。
上記の間にあるボランティアセンターは、立ち上げから地元以外の方が入っている場合が多いためか、ボランティアする人も県外の方が多い。それはもちろん被災が大きすぎると言うことが大きな理由としてある。
地元に住む人が地元の人を助ける、ということが出来るのは、そこにいる人にとって大きな励みになるのではないかと思う。それが若い中高生であったらなおさらだろう。
ボランティアセンターを運営する方々もそれをすごく嬉しくおもっている様子だった。
もちろん県外の力もとても大切で、地元以外の人が興味関心を持たなくなるのはとても危うい状況ではある。
けれど、だんだんと地元以外の人間、自分の場所に帰って行く人達の力では、どうしても関与出来ない問題にシフトして行くのも事実だと思う。
瓦礫を片付けるようなことではなくて、そこのコミュニティがどうやって形を変えて行くかと言う問題になってくる。
それはそこに根をはる人間以外が、何かを与えようとするような態度では決して解決されない問題だ。

お話を聞いている途中から局長のUさんも加わってくださった。
Uさんはいろんなボランティアセンターに応援として入っていて、とても冷静にこのことを見ているみたいだった。
沿岸に元から仕事がないこと、震災で人口はさらに流出するだろうと言うこと、そこで町が町としてあるためにはどうやって仕事を生んでいくのかを考えなきゃならないということ。
Uさんは私達が車中泊をしているというと、おかしそうに笑って、久慈市のボランティアさんが泊るという古墳の湯と言う温泉を教えてくれた。
古墳の湯、と言うだけで、私達はつい、すごく笑った。

せっかく青森に来たのだから、と言って青森市にある青森県立美術館に向かう。
まったく予定してなかったけど、でもなぜか行っちゃえと思った。
青森市まで山道を走る。
この道は2年前にも友達と旅行に来て、走ったことがあった。
その時は雪が深くて、道路の両脇には5メートル近く雪が積もっていた。
雪に指定されているみたいに、その間を丁寧にゆっくりとはしった。
今回は雪はなかったけど、木々が道路を囲んでいて霧が濃くて、やっぱり以前と同じ道を同じように走っているんだな、と思った。
車の中で音楽をかけていたけど、なぜかあまり印象にない。
色んなことを話したけど、その時の声とかはあんまり思い出せない。
なんなんだかわからないけど、青森にはすこし特別な種類の静かさがあるような気がした。

山のなかでドライブインに入る。
おばあちゃんがひとりでやっている、控えめだけど面積は広いお店で、みそおでんを食べる。
おばあちゃんは寒いでしょ、といって石油のヒーターを点けてくれた。
東北に来て初の暖房だった。
おばあちゃんは淡々と編み物をしていた。
お店の中も、お店と言うよりはおばあちゃんのお部屋が広がってるみたいな感じで、少し懐かしいような、いつか来たことがあるようなそんな感じがした。
おばあちゃんは私達にそんなに興味はなさそうだけど、とても優しかった。

青森県立美術館で久しぶりにシャガールのアレコを見た。
アレコは舞台の背景画に使われていた絵で、とても大きい。
これをはじめてみた時、すごくうらやましくて、そして描きたいと思った。
それで去年同じくらいのサイズの布を縫ってそこに絵を描いたけれど、その大きさの中でただ体を動かしているみたいで、絵にはならなかった。
キャンバスの大きさに対して自分が小さすぎるように思った。というより、その大きさを捉えることが出来なかった。それに対する適切な距離が最後まで分からなかった。
久しぶりに見たアレコはやっぱり絵になっていて、うらやましくて、やっぱり描きたいと思った。

また八戸を越えて、久慈へ。
Uさんに教えてもらった古墳の湯へ。
名前もよくわからないし、何もない山の中にぽつんとあるし、変なライトアップがされてるし、24時間営業だし、ラジオがガンガン流れているしで、とても怪しげだった。
中に入ると結構な高齢のおじいさんが受付をやっていて、それもなんだか不思議だった。
温泉自体はきれいで、謎の露天風呂もある。
なぜかそこから崖が見下ろせて、遠くに町の灯りが見える。
裸で町を見下ろすって、なんか、強いのか弱いのかどういう立場なんだかよくわからない。
とりあえずその夜景はきれいだと思った。

山を下りたコンビニの駐車場で車中泊をする。
さっき裸で見下ろしたコンビニだと思うと、また不思議な気分になる。
美術館で買ったスケッチブックに何枚か絵を描いた。
今までより少し気に入った。

 

 9.13(10.13)

 

 

青森の山道は霧が濃くてきれいでした。山小屋はストーブを焚くほどさむいけど、町の人は半袖が多いです。

久慈市の古墳の湯という温泉施設にいました。露天風呂が崖っぷちにあって、岩の上に立つと町が一望出来るという謎のスポットです。なんか偉くなった気分でした。24時間営業で仮眠室あり。ボランティアさんの利用も多かったとか。

沿岸部に仕事がないことは深刻な問題だと思います。それはおそらく津波の来る前から存在していた問題。なぜ日本は地方にお金が回らないんだろう。素敵な人 たちばかりなのに、おいしい食べ物を育ててくれるのに、なんでなんだろ。素朴によくわからない。その土地その土地から発信したいことが沢山ある。

今日は少し時間があいたので、青森県美にいってきて、久しぶりにシャガールのアレコを見た。去年の夏に同じ位の大きさで絵を描いたけど、キャンバスのうえ で走り回って遊んでるみたいになっちゃって、なんだか絵にならなかった。アレコは絵だった。大きさに対しての接し方がある。頑張ろうと思った。

twitter@seonatsumi